妄想会議オンライン 第2回「遠くても近い場所、近くても遠い場所」ダイジェスト

2020/11/5に行った、「妄想会議オンライン 第2回」の書き起こしをダイジェストでお送りします。

日時:2020年11月5日(木)20:00〜
場所:YouTube生配信/zoomウェビナー
主催:Scale Laboratory
助成:ふじのくに#エールアートプロジェクト

ゲスト:長井江里奈(舞台芸術集団「山猫団」主宰 ダンサー・演出家・ファシリテーター)

わっしょいゆ〜た (ジャグラー・パフォーマー)

鈴木彩 (パーカッショニスト)

司会:高橋裕一郎

グラフィックレコーディング:サノユカシ(Scale Laboratory)

プロデューサー:川上大二郎(Scale laboratory 代表)

●出演者のプロフィールはこちらをご覧ください。

(1)今、どうしてる?

高橋

コロナが始まって、盛り上がって、今、それぞれが新しい生活様式にちょっとずつ気持ちや体がなじみ始めた頃だと思うんですが、なう、どうでしょう。

長井

私は小学校や公共ホールで一緒にダンスワークショップ(WS)をするのがメインの仕事です。今現在、10月11月はなんと、例年よりも多いんですよ。今日も東京都の小学校の特別支援学級で一緒に学芸会をつくるWSをやっています。昨日は横浜へ行って、今月はもう週3日か4日くらいはずっとWSをしています。
なぜWSが多いかというと、学校の行事がなくなっていて、運動会もできない、何もできない。でもWSならできるんですよ。授業の一環だし、文化庁から支援が出ているので、例年より申し込みが多いみたいです。
こんな時期に私たちが学校なんか行っていいのかなって思ったんですけど、なんかもう、そういう楽しみがなかった子どもたち、先生方もこう「待ってました!」という感じで。
もう私は今、めちゃくちゃ生!ザ・生!!子どもたちもう、こんなんなって、見たことない。

わっしょい

触れ合ってる(笑)。

長井

もちろんマスクはしているし、消毒などにもすごく気をつけているんですけど、子どもたちは関係ないんですよね。熱くなったらマスクも外していいよーって言ってる。先月10月、福岡で大人のWSをやってきたんですけど、もう、ほんとにね、みんな「待ってました!!」って感じなの。この、生で、広い場所で、人と一緒に踊る機会を、すごく欲してた人たちが「うわあ~!!」ってなって。
あんまりギュッと密着できない違いはあるけど、ダンスにおいてはあんまり何も変わらないですね、コロナ前と。

高橋

子どもを相手にするのは、大人さえ気をつけていれば、楽っちゃ楽ですね。大人ばかりだとみんな気をつけなくちゃいけないけど。

長井

そうですね。大人のほうが、こっちが気をつかいます。とくに知らない人同士だと、身体的な距離、パーソナルスペースは確実に広がってるんですよ。これ以上近付かれるとちょっと不快っていうのは、今までより広がっているので、「あなたのパーソナルスペースはどれぐらいですか?」みたいなことをお互いに確認しながらちょっと丁寧にやるんだけど、子どもたちは毎日学校で一緒にいるので、休み時間とかうえ~ってなってるからあんまり変わらないですね。
それでも給食の時は、今はまっすぐに前を向いて、黙って食べる。それは、どこの学校もけっこう徹底されてます。
ちゃんと切り替えみたいなのが、子どもたちはできてるのかな。

高橋

では、山猫団的のパフォーマンスとなると…?

長井

それがねえ、それも変わんない。
予定していた舞台公演が二つあって、ひとつは9月だったのが延期になって、(2021年の)1月になりました。今後、公共ホールと組んでやるんですけど、12月に、福岡県宗像市で、市民参加型公演をやります。1月には山猫団としての公演を神戸でやるんですけど、両方、普通に進んでます。公演のほうが、お客様を入れる対策として気をつかわなければいけないことは多いと思う。PCR検査しないといけないとか。

高橋

素晴らしいですね。

長井

強いですね、わりとみんな。タフ。ここまできて、「これ以上我慢したくない!」「やりたい!」みたいな感じがみんなにあります。どんな対策してでもやる!っていう感じです。
感染者が多い所のほうが、もう「やろう」って前向き。たまたまやることになってたのが神戸と福岡で、東京から人が来ては困るみたいな空気はそんなにないので、まあお互い様って感じです。中止になっちゃった地方もあります。東京から来てもらっては困る、そういう場所もあります。そこは地域差があるみたい。

高橋

そういうのも、受け入れて、ですね。続きまして、一番影響を受けそうなゆ~たくん。現在は、どうでしょう?

わっしょい

普段はいろんなところのイベントや施設などに呼ばれてのパフォーマンスを仕事としてやるケースが多いのですが、2月の終わりから3月にかけて、学校が休みになり始めた時からその予定が全部なくなりました。緊急事態宣言が出て、3・4・5月はパフォーマンスができる状況ではなかったですね。夏も基本的にはイベントはなかったのですが、コロナの中でもやっていこうよっていう、勢いのある人たちが作り上げたイベントに声かけていただく形で7月・8月は過ごしました。9月10月、今11月ですが、その流れでコロナ禍の中でも試行錯誤してやっていこうよとなっていて、自分もパフォーマンスやらせていただいている感じですね。
基本的にはマイクを付けてしゃべるパフォーマンスをやっていますけど、しゃべらないでいることもあります。状況に応じってっていう感じですね。しゃべったほうがいい状況であれば、しゃべる。
フェイスガードを付けてやりますね。一番最初はマスク付けてやりましたけど、やっぱ表情が見えないと意味ないよねって感じで

高橋

フェイスガード付けて、ヘッドセットマイク?

わっしょい

ですね。内側に入れて。

高橋

大変!このぐらいしかすき間ないもんね。パフォーマンスできない人が大半だと思うけど、対応できる人も限られてくる?

わっしょい

パフォーマーの中でもできる人たち、できない人たち、いるのかもしれないですね。ぼくはありがたいことに、けっこうやらせていただきましたね。

高橋

パフォーマーでも全然できない、全然声かかんないっていうのを、たまにSNSで見ると、やってる人もいるのにな~なんて思ってました。
エンターテイメントとかパフォーマンスが活気づいてくると、やっと戻ってくるのかなという感じがしますね。最初に影響を受けたジャンルだからね。

わっしょい

一番最初でしたね。コロナが起きる前は、誇りを持ってエンターテイメントは必要不可欠だと思っていました。それがポーン!となくなって、「あれ?!どういうこと?」みたいな感じになった。そこで改めて、一番最初に影響を受けるんだということに気づきました。7・8月あたり、忙しくしつつも、他の仕事をすることも考え、その間にバイトもしました。
やっぱりパフォーマンスしてると、「生きてるな」って実感します。ないならないで生きてる感じはしますけど。やっぱこれなのかなと。
自粛期間中の4・5・6月はパフォーマンスを人に見せるっていう機会はなかったのですが、他のことをやりながらも、自分の中でで芸をやるマインドが残ってて、自分自身がジャグリングを楽しむとか、練習するのは、それはそれでいい時間になりました。

高橋

続きまして、彩ちゃん、現在どうですか? このコロナ期間はずっともう、ベルギーですか?

鈴木

そうです。3月にロックダウンが始まってから今まで、ずっとベルギーにいます。3月に始まったものは一回収束したんですけれど、患者数が多すぎるということで、政府が10月末からまたロックダウンを始めました。すべての飲食店は営業中止、すべての文化イベントは中止、もう何もないような状況です。
ただ、9月10月は私もけっこう忙しくて、毎週コンサートがいろんなところでありました。オーガナイザーも徹底して感染症対策をしていたので、これなら大丈夫かなと思ったのですが、ここまでやってもダメだった。でもこっちの人も、生演奏とか生の上演はできなくて、ほとんどオンラインだったりしますが、コロナ用のパフォーマンスを常にオーガナイザーが考えています。ベルギーはそんな状況です。

長井

そのロックダウンは、国境を越えてもいけないの?

鈴木

国境をふさぐのが最終手段で、今回は開いてるんです。開いてるんですけど、3月のロックダウンの時にくらべたらズーンと来ましたね。こんなに長引くとは、っていう。政府によれば、ロックダウンが終わっていろんなとこに行くようになって、テアターとかが開いて、映画館とかも全部開いて、人同士の接触が増えすぎちゃったのが問題みたいです。政府に言われると絶対なので、従うしかないんですけれど。
1回目のロックダウンが終わって、演奏活動が再開できるようになった時は、「えっと、どうやって自分の状態を舞台に持っていくんだっけ」みたいな、完全に忘れちゃってたんです。私、こちらで自分の楽器を持ってないので、ロックダウン中はほとんど練習しなくて、何もしなかった。

高橋

何してたんですか?

鈴木

死ぬほど料理してました。「時間がかかる料理」で検索して。時間をかけたい、時間をつぶしたいっていう理由で。まさかこんなに長引くと思っていなかったので。でも料理はかなり上手になりました。

川上

どんな料理?

鈴木

レシピがあればなんでもできます。すごくちゃんと忠実に(レシピに)従うってことができます。楽譜に従って弾く。でも最近、もっとエキサイティングする音楽がしたいな、ってすごく思うようになりました。楽しいことができたらいいなーって思います。人に頼まれてやることよりも、自分で自発的にできたらいいなーと。これがなかったら思わなかったかもしれないです。仕事があればそれに専念していればよかったような時期だったので。

(2)遠くても近い場所 近くても遠い場所

高橋

みなさん、現時点では、ストレスがないことはないでしょうけども、うまくそれを変換して、前向きに何かやれているという感じですね。

長井

そうですね。自粛期間中の、家から出かけられない、人に会えないのはけっこうストレスだったけど、今はわりとふつうに会ったりできる。東京は公演も再開してるので、私は今月、あと二つ舞台を観に行きます。逆にちょうどいいですよ。前はイベントもいっぱいあって、自粛期間中は配信がいっぱいあった。今は両方落ち着いて、いろいろちょうどいいです。身の置き方みたいのが、私も含めみんなわかってきた。人との接し方とか距離感とかそういうのも。

高橋

そういうのもみんな理解しだしましたもんね。長井さんはバイトとか他の仕事やった方がいいのかな、なんてこと考えました?

長井

考えました。私、今の年齢だからギリギリまだ戻れるけど、10年後とか5年後に同じ状況がもう1回来たら、復帰できないと思って。彩ちゃんが言うように、やっぱり忘れちゃう。現役でいるのが半年も空いたらもう難しいと思って、翻訳の仕事をしようと、ずっと英語の勉強をしてました。翻訳のコンテストに応募したりしてました。今はもう、それどころじゃなくなって、やってないですけど。でも、細々と勉強は続けていこうと思ってます。やっぱり、ダンスを仕事にするっていうのはかなり不安定で、それしかない、っていうのは怖いですね。たとえば自分が大けがや病気でできなくなる可能性もある。これしかない、っていうのは危ないとすごく思いましたね。

高橋

ちなみに僕もラジオ以外のしゃべる仕事は2月の終わりに1本やったきり、半年後の8月の終わりまでなかった。もし僕がラジオなしのフリーランスだったら、完全に無職になってた。ラジオがあって本当良かったな、と。でもラジオも、もし局で(新型コロナウイルスの感染者が)出てしまったらできなくなってしまうので、頭をピッて(検温)やるし、手も消毒するし、アクリル板立てて、ゲストは一人しか呼ばないとか、対策した。最初の頃はゲストなしもあったけど、今は一人までOKになっています。やっぱり僕も(仕事が)何本かないと、怖いなっていうのは感じましたね。エンターテイメントだけじゃないもの、っていうのかな。裏の顔じゃないけど、そういうの必要なのかなって。

長井

そうですね。現実的に、収入をどうやって得るか。私はダンスをずっとやっているけど、英語は高校で勉強してて、ある程度しゃべれるんだけど、ある程度でほったらかしになっちゃってたんですよ。もったいないなと思って。器用貧乏とはまた違うんだけど、自分の能力を活かすのは、一方向に限らないぞ、みたいなのが、つながってきたりするかもしれない。
どうして翻訳かというと、自粛期間中に家にいて、毎日けっこう気分良くて、お散歩したり、お掃除して、洗濯して、ご飯もきちんと毎日作って食べて、「あたし、インドアいけるわ!」って。試しに、生まれて初めてTOECを受験したら、高得点を叩き出しちゃったんですよ。
あら、じゃあ、これはもしかして仕事になるなーと思った。あと本を読むのが好きで、最終的には文芸を、小説を翻訳したい。
あと、日本語ってすごいマイナーで、いろんな世界のいろんな文献が、日本語に翻訳されてないものもいっぱいあるのね。私、瞑想をずっとやってるんです。head space っていう名前の瞑想アプリがあるんですけど、それがガイドしてくれてる人がアンディ・プディコムっていうイギリス人で、その人の瞑想の話もすばらしいんだけど、1個も日本語に翻訳されてないの。それらを紹介したいっていうのもあって。
英語を書くなり、読めるなり、しゃべるなり、使えるってなると、可能性はすごく広がる。日本語が通じるのって日本人だけだから、それはちょっともったいないなって思う。

高橋

今日は「遠くても近い場所、近くても遠い場所」。オンラインもあってなおさらそれを感じた時期でもありますね。だって彩ちゃんベルギーだもんね。だるまがあるせいで、すごく近くに感じるんだけど。

長井

10年前にこの状況が来てたら、こんなこと技術的にできなかったから。昔のニュースって「ニューヨークのなんとかさーん!」「…」「…」「はい。」みたいな感じだったでしょ。未だにどうして彩ちゃんと時差がなく話せるのか、不思議です。

鈴木

タイムラグ、たしかにないですよね。さみしいけど、これがあるから、なんとかなってるっていうのはあります。つながっているって、こういう時に思いますね。家族と電話したりすると、スカイプとかがなかった昔の人はさみしかっただろうな。

高橋

彩ちゃんもさ、最初の頃って日本に戻れないし、そっちでやれないし、僕らよりももっときつかったんじゃないかな。

鈴木

そうなんですよね。もともと、最初のロックダウンが始まった時は3週間という話だったんです。それなら別にいいやと思っていたけど、次8週間に延期になって、国境も閉鎖されて「あ、これはいよいよやばいかもしれない」って。
飛行機の状況を言えば、4月5月から今もあんまり変わっていません。私、来月の半ばに日本に帰りたいと思って、飛行機の予約を取ったんです。週に2便くらいしかなくて、今もまだ、ベルギーから直行便は1本も動いてなくて、アムステルダムなどを経由します。
一番最初に取った便が乗り換え1回で15時間のだった。取れてよかった、と思っていたら昨日、キャンセルになりました、って言われちゃって、代わりのフライト見たら30時間かかります、みたいな。世界的に危険だと言われているブリュッセルから帰るので、空港の外に出られないから、ヘルシンキ空港に寝泊まりしないといけない。
すごく遠く感じますね、日本が。今までで一番遠く感じます。

高橋

海外経験の中でも今回が一番大変な経験?

鈴木

ちょっと他人事ですけど、こんなことあるんだなーって。ヨーロッパは「対コロナ」というより「対政府の政策」という意識が強いですね。人通りの多いところだけマスクが義務で、マスクをしなきゃいけない通りの地図があったりして、すごいヘンです。
最初、音楽のイベントが復活したと思ったらまたNGになってしまって。その理由は、音楽とかテアターを見に行くお客さんの層が、観た後にビールを飲みながら集まって話す傾向にある、映画を観る人たちよりもそういう傾向にあるからNG、とか。

川上

そこ込みで楽しんでいる文化だからなあ。

長井

そこはすごく国民性があるよね。日本は今、劇場や公演が再開されているけど、観に行っても本当にまっすぐ帰る。8月くらいかな、かなり久々にオープンした公演で、入手杏奈ちゃんが出てた新国立のは、1回も出演者で飲みに行ってないって言ってたのね。それはもちろん、やめてください、って言われてるプラス、自分たちでも自粛してたんだと思う。
フランス人だと、バカンスになったら「イエ~!!」みたいになる。学校がどんなに閉じてても。
今日本の学校すごく大変なの。休んでた分取り返そうとして、45分の授業を5分だけ縮めて40分授業にしてどうにか7時間入れてとか、もう詰め詰めでやっているの。土曜日も授業をやっていい、とか。フランスは別にバカンスはバカンスだからみたいな。ほんとそういうところは国民性がすごく出る。

鈴木

たしかに。自粛っていう言葉、こっちの人にはゼロです。政府が定めた規則に従っていれば、それ以外はもう、なんでもいいっていうか。そういう国民性も政府がわかっているので、規則はすごい事細かになっています。人に会っていいのは4人までで、家に呼んでいいのは1人まで、今は2人かな、で、最大1人までとハグしていいっていう。こっちは警察がすごい権力を持っています。ちょっと外でマスクはずしてたら(警察が)来ますし。あまりにも抵抗すると、その場で切符切られて罰金とか。ルールです。

高橋

すごい文化の違いですね。日本はマナーというかモラルというかエチケットというか、ルールを厳しくしないでふわふわっとしてる。民族というか、文化ですよね。

川上

ゆ~たくんは周遊してたんだっけ?

わっしょい

そうですね。自分はヨーロッパを3ヶ月ぐらい旅をした時期があって、その後ヨーロッパからメキシコに飛んで、メキシコに6ヶ月いました。その後またヨーロッパに戻って、3ヶ月ですね。1年の長い旅をしましたね。今からもう、9年ぐらい前です。最初は2ヶ月の予定で海外を見てみようと。放浪の旅みたいな感じで、バックパック背負って、芸の道具が入ったトランク1個持って、旅に出ました。楽しくなったらもっと長くいようかな、という感じでいたら結局1年経っちゃいました。

川上

よくもったね、お金が。

わっしょい

それはもう、道で大道芸をして稼ぎました。その旅の中でいい出会いがあって…。一人で行ったんですけど、7月にフランスのアヴィニョンという街で、日本語をしゃべれるスペイン人の友達ができました。あだ名は「オルミガ」と言って、本名はアントニオです。彼もジャグリングやサーカスをする人だったんで、彼が持っていたキャンピングカーに乗っかって、そのままずっと彼と一緒に旅をして、彼の実家へ行ったり。日本人の観光客というより、地元の人みたいな感じで過ごしました。彼のスペイン人のおじいちゃんち行って、日曜日にみんなで集まって、「これが本物のパエリアだぜ!」って言いながらたき火でパエリア作る、みたいな。この時からラテン的な、スペイン人的な脳みそになりました。その後メキシコに行って、帰ってきた。その後、彼とは家族ぐるみで付き合う関係になったんです。
今年の3月、ロックダウン中に、オルミガが日本に来たんです。彼はもともとジャグリングとかサーカスのアーティストで、今はミュージシャンで、日本でツアーをしようとしていた。2月、コロナ禍になる前に、ギリギリたどり着いたけど、彼も予定が全部キャンセルになった。彼も日本で動きが取れないし、自分もコロナの影響で仕事がなくなり、時間ができて、タイミングが合ったので、自粛期間中は彼と一緒に過ごす時間ができましたね。だからスペインの4月のロックダウン中は、彼が家族とスカイプやテレビ電話で話す状況を聞いて、スペインも大変なんだなっていうリアルな情報も入ってきました。8月に彼はチケットを取ってスペインに戻りました。観光ビザも3ヶ月だけどロックダウンの関係で延びました。で、彼がまた11月に日本にやってきます。三重県の志摩スペイン村でジャグラーとして働きます。また長い旅もしたいし、海外に行きたいとは思っていますね。

高橋

すごいな~。でも内臓強くないと海外行くのたいへんでしょ?小さい頃から胃腸が弱いもんで、とにかくそれだけ海外行くのが怖いの。

わっしょい

行っちゃえば沼津と一緒みたいな感じのところありますよ。俺なんかいつもの自分の街歩いてる感覚ですよ。行くまでのイメージが強いんですよ。僕もメキシコ行く前に、オルミガにメキシコへ行こうって誘われて、どうしようかなって思ったんですけど、ここを逃すともう行くタイミングないかもしれないと思って、行ったんです。
メキシコ行く前にいろいろ調べたら、メキシコは世界で一番恐ろしい国みたいなのがネットでいろいろ出てきちゃって、警戒意識みたいのがすごい出てきちゃった。そういう気持ちも抱きつつメキシコに着いた。ジャグリングのクラブっていう棒状の道具をかばんに入れて、背負いながら空港にたどり着いて、荷物検査したら警察がいた。その警察が「お前それは何だ。何に使うんだその道具は。ちょっとやってみろ。」って言われた。「こうやるんだ!」って言ってやったんですよね。そしたら「おおー!」「お前これは信号機の前でやったら儲かるから、やってみろ」って。それで「あれ?イメージよりいい国だな」ってなった。前情報と行ってみてのギャップみたいなものも感じました。だから裕さんもぜひ!

高橋

僕は1回、ペルー行った。首絞め強盗がいるって言われて。怖いから、髪の毛わざとボッサボサにしてヒゲも生やしていったら、向こうに着いてすぐに「エスパニョーラ?」って言われて。「ノーノーノー!ハポネ(日本人)!」って言って。これで大丈夫だ、おれは現地人だ、って。ただ胃腸薬は全部飲みきって帰ってきた。全然ダメでしたね。一番美味しかったのはマチュピチュで食べたチャーハン。

高橋

長井さんの海外はどんなですか?

長井

私は皆さんに比べたら少ないですけど、高校が英語科だったので、2年生の時に3ヶ月テネシーの大学に留学しました。あとは、若い頃いたカンパニーは海外のツアーが多かった。たとえば、イギリス公演の後にドイツ公演があって、2週間空いたら「1日1万円やるからヨーロッパにいて」って言われて、2週間、大道芸しながらイタリアを回りました。でもゆ~たさんみたいにはいかなくて、「は!これでビールが飲める」ぐらい。もう全然、稼げなかった。あとなんかすげー怒られたりとか。「お前ら誰に許可とってここでやってんだ!パスポート見せろ!」みたいな。

高橋

どんなパフォーマンスをしたんですか?

長井

すごいシュールな、ザ・日本人な感じの…。あのね、日本人観光客がみんなスーツを着て、カメラ持って、写真を撮っているっていう。そこから始まる。それがのちの「まことクラヴ」につながったんですけど。

川上

ゲストのみならず、ユカシも。ユカシさんと言ったらポートランドですよね。

ユカシ

はい!私もアメリカに1年と少し、行きました。今年(2020年)の1月に帰ってきたけど、当然今年の秋にまた行けるものだと思っていた。向こうでお世話になった同居人のファンキーおばあちゃんみたいなホストマザーがいるんですけど、その人に、「どうせ今年の秋にまた来るよ!バーイ!」みたいな、すごく軽い感じで別れて来た。まさかこんな状況になると思わなかったので、行けなくて残念です。向こうでもいろいろやらせてもらった。私、はったり英語みたいのしかしゃべれないのに、書道の先生させてもらったり。お習字を本格的に習いたいというより、ちょっと触ってみたいというアメリカの人たちがいて…海外で、うまくいくかどうかわかんないけど、自分のできることをやってみるっていい経験。私の場合は書道教室みたいなことをやってみたら、受け入れてくれるんだな、っていうのをすごく感じた。
〈Flick〉って言葉あるじゃないですか、はねる、っていう意味の。だけど、この L の発音を、私 R にしちゃったんです。〈Frick〉にしちゃったの。そうすると超汚い〈Fuck〉みたいな意味になる。それで、みんなに「ここで! Frick!」って言ったら、ポカーンとされちゃって。「こいつ何言ってんだ?」と。〈Fuck〉みたいなことをすげえ熱弁してて、「ここで〈Frick〉!」って言ったら、ある生徒さんに「先生、それ〈Flick〉なんじゃないですか」って英語で言われて、「じゃあ〈Frick〉の意味はなんだ」って生徒さんに問い質したら、誰も答えてくれなかった。相当汚い言葉だったらしくて、みんな苦笑いしつつも、「先生の授業楽しかったよ~!」とか言いながら帰ってくれた。絶対忘れない!この言葉!いい経験ですよね、海外で失敗するって。

川上

彩ちゃん、ちょっと、街並み見れないの?ベルギーの。

鈴木

ブリュッセルです。

高橋

新しいと古いが一緒なのは沼津も似たとこありますね。

川上

どうしても沼津に寄せていこうとする!(笑)お部屋もおしゃれなんじゃないの?

鈴木

最近これを設置して。植物を育てるためのグリーンハウスで、三つ葉を育ててます。沼津とだいたい一緒でしたね(笑)。

高橋

御成橋あたりの雰囲気がね。遠くのビルがリバーサイドホテルに見える。

長井

沼津はすごくいいですよね。私も沼津は、何の縁だろう、たぶん裕さんが入口だったような気もするんですけど。
大二郎さんに誘ってもらって、沼津の長浜城のお祭りで振付をさせてもらったのが始まりで、裕さんに紹介してもらって、プロレスリングの上で踊らせてもらって、それを見てくれた『ON Safari』っていう洋服屋さんの山崎ヨーコさんが、いろいろお店を紹介してくれたりした。私はたぶん、渋谷とかより沼津のほうが行きますよ!2時間かかるけど。長泉町の美容院で髪切って、『ON Safari』で服買って、今一番好きなレストランは沼津の『チュチュルリエ』。こないだユカシに『SECESSiON(セセッシオン)』っていうすごい素敵な洋服屋さんも教えてもらった。沼津は毎回行くたびに楽しいです。私、相当好きです。おもしろい。スケラボさんもね!

川上

沼津ラクーンを見つけたきっかけが、彩ちゃんと江里奈さんだった。

長井

なつかしい。まだ廃墟の時にね。

川上

ゴミに埋もれて待機だったからね。

長井

エアコンも空調もない8月に。開演したら汗びっしょりだったの。でもラクーンでの公演はずっと続いてていいですね。

川上

『待ち合わせは月の裏側』っていうね、素敵な作品でした。(2016年8月18日開催)

長井

わっしょいゆ~たさんはどうして「わっしょいゆ~た」にしたんですか?

わっしょい

さっき話したように、1年旅をした後に「わっしょいゆ~た」になったんです。それまでは大道芸人「ゆ~た」っていう名前だった。
海外から帰ってきて、日本ぽいイメージの名前を付けたいなって思った。それで、いろいろ考えたんですけど、友だちと話していて、「わっしょい」っていいね、という話になって。出落ち感はけっこうありますけどね。

長井

私、よくメールとかで「次の公演がんばってね」とかで「がんばって」っていうのなんかあれだなって思う時、よく「わっしょい!」って使います。「がんばれ」だとちょっと押し付けがましいと思って。「わっしょい」って、「みんな一緒」みたいな感じもする。

わっしょい

わっしょいは、漢字も「『和』を『背負う』」って書いて「和背負い(わっしょい)」。それが正しいかどうかはわからないし、ルーツを調べて正しいものは見つかってないですけど、「和(なご)む」っていう字を「背負う」、みんなで和みの空間を作る、というのは自分のやりたいことでもある。
後付けですけど、そういう部分も含め「わっしょい」っていいなって思いましたね。…真面目か。

川上

困ったら「わっしょい」って言っときゃ、なんとかなりそう。

長井

そういう時も「うーん……わっしょい!!」って使う。

ユカシ

オンラインでやっていると、1回も会ってないけど、この「俺、わっしょい」っていう由来を知ることができる。
こうやって距離があっても、こんなに仲良くなれちゃう。いいまとめじゃない?絵をどうやって描こうか考えてて、「俺、『わっしょい』って言うんすよ~」みたいなの描きたかったの、今。こういうことができなければ会ってもいないわけでしょ、江里奈さんや彩ちゃんたちと。だけど、オンラインを通じて知れる。

長井

彩ちゃんとも相当会ってないし、大二郎さんとも半年ぐらい会ってない。裕さんは最後にいつお会いしたのか…思い出せない。
こういう人に会えない状況で、じゃあ誰かとオンラインで話そうかってなった時に、話したいなと思う相手は、意外に何年も会っていない人だったり、「あ、私この人と話したいと思ってたのか!」みたいなのはけっこうあった。私はこの自粛期間中に、自分の中の人間関係が見えた。全然会っていなかった入手杏奈さんと二人でインスタライブやったりとか。それはおもしろかったですね。

わっしょい

こういう時間ができたからこそ、自分が能動的に動けるきっかけになった。

ユカシ

グラレコのことを話すと、これ自分では特殊だと思ってなかったんです。なんでかというと、私、学校の授業を普通に受けることができなくて、つまらないと寝ちゃうんですよ。だから歴史の授業とか、こういう漫画にしてずっと描いてた。そうすると怒られないし、眠くならない。頭に入っているかどうかは別として、起きていられた。ずっとこうやって描いてたら先生が「コピーさせてくれ」と言って、そういうのがあったから調子に乗ってどんどん描いてた。「これ怒られるどころかほめられるじゃん」って気付いた。そういうのから始まってるみたい。

これからの妄想

川上

彩ちゃんは、お米を揺らして、楽器に当てて曲を演奏するっていうのを開発している。やろうとして、中止になったんだっけ?

鈴木

先々週くらいに、直前に中止になりました。その週の火曜から金曜までレジデンスがあって、土曜日に本番っていう時に、金曜日に中止になったんです。でも、そのレジデンスの間にビデオも撮ったので、近々お披露目しようかと思います。巨大な漏斗(ろうと)に20kgのお米を詰めて、その漏斗の先端が開いていて、それを4mの高さから吊って、それを左右に揺らすと、振り子のリズムができるんです。下に太鼓とかいろいろな物を置いて、置く順番とか置くタイミングでメロディーを作ったり緩急をつけたりする。そういう曲があるんです。

長井

ネタバレになっちゃうんだけど、私、この先の公演で振り子を使おうとしていたの。で、スピーカーを、音が出る物を吊ろうと思ってたんだけど、それが触れることによって音が出るっていう発想はなかったわ!それはひじょうに興味があります。彩ちゃんはふつうの音楽家というよりもエンバイロメント、環境を含めて作る人だね。

鈴木

イケアに行っていろんなグラスを叩いて探しました。

長井

素材から自分で選ぶんだ。お店に米粒持っていって鳴らしたりした?

鈴木

そうです(笑)。

長井

20kgあるってことは、けっこう長い時間揺れるんだよね?だんだん、揺れがおさまっていくの?

鈴木

20kgでこの漏斗の穴だと、11分演奏できますが、それは揺れとは何も関係ないんです。穴からはお米がコンスタントに落ちてくる。揺れは一番最初にマックスにして、だんだんおさまってくる。おさまってくると、上から見ると円を描くようになるんです。最初はお皿を一直線に並べていたのを、最後のほうはお花みたいに円く並べて、それがタラララ…って鳴る。振り子だと、タラーン、タラーンって、左右で一瞬止まっている時間があるんですけど、最後のほうは、ただの円なので、無限運動みたいになる。

長井

すごいね。彩ちゃんすぐ楽器作っちゃうんだね。

鈴木

鉄パイプもお米の下に置いてみました。
お皿だと円くて直径が10~15cmぐらいですけど、鉄パイプだとけっこう長いので、ファーって長く同じ音やってくれたりしておもしろい。
こういう、振り子の運動とか重力を使ったプログラムを考えたいな、って今思ってます。

長井

ぜひご一緒したいです!
私は今ダンスと振り子を組み合わせようと思っていて。ダンスを見慣れてない人が、淡々としたダンスが続くと物語とか何かがないと飽きるっていう現実的な問題があって。何か別の要素があったらいいんじゃないかと思って。振り子はだんだん揺れが小さくなるとか、時間の経過が目で見える。そういうのが同居することで、見え方が変わるんじゃないかなと今思っていて、この先の公演でダンスと振り子をなんとか同居させたいなーと今まさに、考えている。

鈴木

それ何分ぐらいなんですか?

長井

15分ぐらい。

鈴木

15分でいいんですか? 私いま、頭の中に何曲か思い浮かびました。

長井

今度の公演で具体的にやろうとしているし、全然「1時間やってください」って言われたらやれる。やりたいですよ。スケラボさんでぜひ企画してください。ゆ~たさんもぜひ、そこにご一緒してください。1時間ずーっと投げてる!
ゆ~たさんは目の前にいる人を楽しませるために、時間の流れや盛り上がりをすごく気にするでしょ?パフォーマーとして。お客さんが飽きる時間がないように。
でもその、「見せる」ってことを考えなかった場合、たとえば、ジャグリングの練習って延々やるじゃないですか。そっちも見たいっていうのはある。たとえばミュージシャンが演奏してる時の身体ってすごくいいですよね。見せようと意図してない身体がいい、と思っていて。
ゆ~たさんが「見せよう」と思わずにただひたすらこうやってる時間とかね。そういう普段とは違う見せ方も、ちょっとマニアックかもしれないけど、私はけっこう見てみたい。目黒(陽介)さんは、わりとそういう作り方するよね。1時間って決めたら1時間こう、やり続けるみたいな。見てる方もだんだんこう、何見てるのかわからなくなって、その時間の中でいろんなこと考えたりする。

わっしょい

僕はまだそっちのほうの脳みそ使えてないんですよね。そういう部分を、逆に教えてほしい。

長井

見せるんじゃなくて、そこにある、みたいな。わりと興味ありますね。ジャグラーって、すごいストイックでしょ?

わっしょい

ストイックになる時とそうじゃない時の差が激しいっすけどね。いろいろ幅広く、ジャグリングだけでないところもあるので。パントマイムだったり、マジックだったり、ですね。

高橋

すごい話になってるなあ。こういうところから新しいパフォーマンスができあがってきたりするわけですね。

わっしょい

僕は今まで、路上とかイベントでやるようなパフォーマンスをメインにしてきたんですけど、これからは舞台とか作品の方向で行きたいなっていうのはあります。
今まで、路上で成り立つような芸の作り方をしていたので、舞台という限られた空間の中に自分を落とし込んだらどういうふうになっていくか、まだその環境にガッツリ入ってないので、作られていない何かがあると思うんです。その環境に身を置いてみて、自分だったらどうなっていくのか、これからやっていきたいですね。

鈴木

ジャグリングを見てて、丸いボールが手に触れる瞬間が、打楽器に近いなと思うんです。音楽と一緒にやる時に、打楽器奏者的に見ると点で考えちゃうので、合わないこともOKなんだなっていうのがたまに気になったりする。フィギュアスケートとか見ていて、点が合わないところが気になっちゃう。でもそこをカチって合わせたら絶対おもしろい、とずっと思っています。一回それをジャグリングの方とやって、全体のパフォーマンスの中の1分くらいの尺で、球と手と触れるのと、私のバチが触れるのとカッチリ合わせたことがある。そこに快感を覚えるから、それが15分20分のパフォーマンスだったら、すごくかっこいい。そこのゆるさみたいなのは打楽器的じゃないというか面的で、時間に幅がある感じ。メロディックなのかもしれない。
ダンスはそれがしやすいと思うんですよ。道具がないからかな?ジャグリングは飛ばすことを考えて、それが何秒かはカウントしないじゃないですか。でもこっちはしてるから、そこが合ったらすごくいいのになーっていつも思います。

高橋

俺、この三人に混ざるとしたらたぶん、実況生中継しかないですね。「さあ高く投げた!キャッチできるのかー!」みたいな。大二郎さんに解説ついてもらって。

川上

今やってる作品たちに音声をつけるプロジェクトを考えている。それはダンスなんだけど「手が動いています」とかでなく、その時の心情によったテキストを乗せられないかな、と。
ジャグリングと打楽器の相性の悪さを、どう逆手に取れるのか、そのつなぎにダンスが入るのか、ユカシの絵が入るのか、ってことを今考えていた。要は、この瞬間にできた芽のようなものに、どう栄養を与えれば生えるのかしらってことを考えてた。で、裕さんが実況をするって言った時に、やれると思った。裕さんの言う実況と俺のは違うんだけど、裕さんが朗読することではまっていく何かが入ったら、今いるメンツで、すごいことができちゃうかもしれない。
僕が大事にしているのは偶然性なので、計画によらないところがある。今ころっと江里奈さんから出ちゃったことが、自然にふくらんだっていうことは、ここにちゃんと化学反応が起こっている証拠で、それを今、公開中の動画でやっちゃったことがおもしろい。江里奈さんの作品は江里奈さんの作品としてやっていただくとして、これもいつかやりたいなあ。

鈴木

私はダンスの振り付けとか、軌跡の描き方とか、リズムとかを知りたい。完全に踊りながら足音がテンポにはまってる、とか、そういう方向から何か作るってのはおもしろいかもしれません。
何ヶ月か前に、ダンサーの3人のコレクティブの子たちが、打楽器のソロの曲と、3人で一緒に作品を作るからやってくれ、って頼まれました。それはもう曲が決まっていて、有名な太鼓の曲で、私も弾いたことがありました。ベルギーは曲をすごく研究する傾向にあります。コンテンポラリーパフォーマンスもバレエも全部、曲を研究する。彼らもそういうスタイルで、その曲はテンポが同じなんですけど速くて、すごく複雑なリズムで、左右も全然違くて、でもアクセントだけはすごく明瞭に聞こえるけど、それがすごいランダムなんです。弾いてるこっちも大変なんですけど、アクセントの時だけ、その3人がぴったり合って、ガクってするみたいな全然違う動きをする。こっちからしたら、それどうやってやるんだろうと思いました。アクセントが全部ランダムなんですよ。
私も「言え」って言われたら、ちょっとわかんないと思うんです。「弾け」って言われたら弾けるけど、アクセントだけ、何拍目か全部言ってって言われたら、全部わかんないと思う。でも彼らは、そうやって覚えてるんですよね。それを全部、10分間覚えていて、こんな覚え方するなら絶対楽譜覚えたほうが楽だよ、と思うけど、そのアプローチの違いみたいなものを持ち寄ったらおもしろいなーと思います。

長井

ミュージシャンの人って楽譜見ながら演奏するじゃない?とくに難しいやつは。見ながらやるっていうのが考えられない。私たち、覚えるのが基本だから。場合によっては音ももちろん覚えるし、動きは当然全部覚えている。流れで覚えて、それが体に入って自動的に動くところまで練習する。逆にミュージシャンの人たちに対して、「なんでこれが覚えられないの?!」ってよく思う。
でもそれこそ本当にね、「近くて遠い」。いつも思うの。ミュージシャンとダンサーとか、ダンサーと演劇人とか。それこそゆ~たさんと私は同じくパフォーマーだけど、私は劇場育ちで、大道芸はほんとできない。外だからとか中だからということではなく、お客さんの目をずっと惹き続けるとか、何かがすごく大きく違っている。外から見たら大きく変わらないかもしれないけど、違う、ってことはすごくある。でも、わかる、重なる部分もいっぱいある。

鈴木

その違いから何か作れたらおもしろいですよね。

長井

たとえばゆ~たさんがジャグリングをやり続けて、手にパンッていうのが合わないけど、ずっとやっていると、合う瞬間もあるよね。合う瞬間があったり、ずれる瞬間があったりっていうのは聞いていてもおもしろそう。

川上

テキストでつなげるっていうのもありかな。台詞っていうのもテンポがあるし、トンっていう瞬間を持てるの、何ならいいんだろう。シュッって集約するこのポイントを気持ちよく何回か繰り返していきたい。詞としてテンポがちゃんとして整ってるテキストに合わせて、音とジャグリングとダンスとが合っていく。そういうイメージが今あった。

長井

まさに妄想会議じゃないですか?今!楽しいですね、こういう話。

鈴木

さっき江里奈さんのお話をうかがって、ひとつ曲を思い出しました。リゲティというイタリア人のコンテンポラリーの作曲家による『100 metronomes(ワンハンドレット メトロノーム)』という曲です。
メトロノームを100個ぐらい、会場にばーっと置くんです。100個のメトロノームはちょっとずつテンポが違っていて、それを2・3人で開始していく。で、最終的に一番遅いものが残る。それが最終的に止まって終わるっていうシンプルな曲なんですけど、時間軸が見える。メトロノームってちょっと遅くなるので、「あ、止まるな」っていうのがわかる。演者が3人いたとしたら、一人一人が違うテンポとか時間軸をもっている。『ワンハンドレット メトロノーム』がまさにそうで、みんな違うテンポだけど、たまに合う。隣り同士が合ったり合わなかったりする。そんな曲を思い出しました。

川上

AとBが合って、BとCは合うんだけど、ABCがそろう気持ちよさをちょっと取っておいてあとでガン!みたいのが「はっ!」ってなりそうって思ったりして。

わっしょい

合った瞬間、気持ちいいっすね。

川上

読み終りと合わせるとか。たとえばユカシはひたすら壁いっぱいにフリックしてるとか。エロいほうじゃないほうだよ(笑)。レ点がずっと壁に並んでいくとか、音の強弱でそのレ点が変わっていくみたいな。すごい疲れるな、これ。うん、考えちゃう。

わっしょい

化学反応起きましたね。

長井

ほわっとここに持っといて、「今だ!」っていう時に出す。

川上

これけっこう、長くなると思うよ。クリエイションするとしたら。わっしょいさんの精度を相当上げていかないとやばい。

長井

公演やりましょうって言って、じゃあそのズレと何かをと言って、「やらねば」みたいになると重たくなるから、まあまあ、1回3人でちょっと遊んでみましょうか、みたいな感じで、うまくいけばやりゃあいいし、「まだだね」ってなったら、寝かせればいい。遊び、くらいでいいんじゃないですかね。「やらなきゃ!」ってなると楽しくなくなっちゃう。

高橋

第2回妄想会議オンライン「遠くても近い場所、近くても遠い場所」。最後に最高の妄想ができたんではないかなと思います。
これからすごいことが始まる、その瞬間に僕も立ち会えてしびれています!

川上

みなさん、ありがとうございました!

こちらから動画でもご覧いただけます!🎥

次回は1月15日に開催予定です!