妄想会議オンライン 第3回「どこへでも行ける どこででも生きる」ダイジェスト

2021/1/15に行った、「妄想会議オンライン 第3回」の書き起こしをダイジェストでお送りします。

日時:2021年1月15日(金)20:00〜
場所:YouTube生配信/zoomウェビナー
主催:Scale Laboratory
助成:ふじのくに#エールアートプロジェクト

ゲスト:巻上公一(超歌唱家、ソングライター、詩人、プロデューサー)

松岡大 (舞踏家・LAND FES 代表/ディレクター)

はと (絵描き)

司会:高橋裕一郎

グラフィックレコーディング:サノユカシ(Scale Laboratory)

プロデューサー:川上大二郎(Scale laboratory 代表)

●出演者のプロフィールはこちらをご覧ください。

(1)今、どうしてる?

高橋

昨年からコロナ禍で、乗り越えたのかわかりませんが、2021年になってしまいまして、この現状を今どう生きていらっしゃるのか。
まずは、巻上公一さんからおうかがいしたいです。巻上さんはヒカシューのリーダーとして、1970年代からずっと活躍していらっしゃる中で、いろいろと大変な時期もあったと思うんですが、今も、新しい形の大変な時期に入ったという感じでしょうか。

巻上

このタイミングはあんまりないんじゃないですか。ウイルスによる、大変さというのはほとんどの人が経験がない。こんなに長くなると思ってなかったんじゃないでしょうか。これはちょっと、今ギリギリなところに来ている人が多いと思いますよね。

 

高橋

今はどうですか。ちょっと山越えて穏やかに進めている?それともまずいなあとか逆に怒りがあるとか。

 

巻上

まあずっとまずいんですけど。(一同笑)ずっとまずいから、コロナ禍になってもたいしたことないなって思いながらもやってるわけです。

高橋

今、何もできてない状況ですか?

巻上

いや、やってますよ。やり続ける。僕らの仕事は、作曲したり録音したりすることもできるので、現場がない場合でも、仕事ができる環境があります。30年40年のアーカイブがありますから、ずっとそれをまとめたりしています。

高橋

じゃ今までずっと棚の上に置いてあったものをちょっと持ってきて、もう一回やってみようかな、と。そういうミュージシャンの方多いですね。

 

巻上

みんな、たぶん、毎日録音してると思いますよ。これからいっぱい、いろんなレコーディングとか出てくるんじゃないんですか、多くのミュージシャンから。
コロナ禍で異常な大量生産に陥ると思いますけど。

高橋

オンラインだからこそ、いろんなところから音源が集まってきて、逆に、いろんな人が参加するアルバムが作れたなんていうアーティストのお話を聞きました。

巻上

そんなこともできますよね。今は音を集めるの簡単になりましたから。けっこういい音で送れるでしょ?昔は大変だったけど、今は、すごい速度で送れますから。今までもそうですけど、たとえばこっちで録音したものを、ニューヨークに送って、それで音をまとめてもらって送り返してもらったりとか。で、「ここ違うから直して」と言って、直してもらって。こういうことが、より激しくなるんじゃないですか。

高橋

逆に、いいことですね、これ。

巻上

うん。ただね、思いつかなきゃいけない。今家にいるから、他とつながっているってことを思い付くことが、今までの活動が重要だと思う。自分の身近だけでやってると思い付かないじゃないですか。もともとつながりがあれば、どこにでもすぐにコンタクトできます。
もう早速やったのが、コロナ禍になってから、僕よりも10歳ぐらい年上の人たち、デイヴィット・フィルミート、ポール・ダットンという先輩のボイスパフォーマーたちがいるんですけど、彼らから、ネット上でできないかっていうリクエストがあって、ゲームを使ったパフォーマンスをやったんです。結局、みんなよくわからないので、僕がまとめる羽目に陥っている。
いろいろデータをきちんとまとめたりとか、レコーディングしたりとか、僕に仕事が全部来ちゃったんです。

高橋

コロナ禍だからこそ、そういう素敵ないい話が。50代とか60代のインターネットとかYouTubeとか言ってる人たち、今はみんなyoutuberにならざるを得なくなってきた。若い世代とつながりますね。

巻上

昔もありましたからね。ビデオの時代には、このビデオどうやってやんの?みたいなのが。

高橋

去年だったらちょっと重々しい話もしてたような感じがするんですが、今巻上さんとお話をすると楽しいですね。
巻上さんは今、熱海にいらっしゃいますけども、「来ないで」って看板立ってましたもんね、観光客の方に。

巻上

そうなんですよね。熱海ってほとんど、静岡と神奈川の県境じゃないですか。行ったり来たりしているのが多いから、どっちにも来るなって書かれているからね。
 

川上

行き場なくなっちゃう(笑)。

 

川上

巻上さんは常に先を行ってるので、去年(2020)、熱海未来音楽祭を僕ちょっとお手伝いさせていただいたんだけど、その時も、海外の方と中継してライブをやっていらっしゃった。その時は向こうがたしか、朝の3時とか4時とかだった。リスボンと中継をつないでいて、相手の方は寝ちゃってて、「は!ごめん!今起きた!」みたいになって、これもまあライブだわな、と思ってすごいおもしろかった。

松岡

アラームにブチ切れてましたよね。「このファッキンアラーム!」とか言って。

巻上

みんな会場で彼が起きてくるのを1時間ぐらい待ってたんですよ。起きて、つながった瞬間は拍手が起こりましたよ。困難に打ち勝ったシーンをみんなで体験すると、ものすごく大きな感動を得られる。

高橋

じゃあ、リスボンと4時くらいにやっとつながったんですか?すごいですね、でも。ほんとに大変な中仕掛けてますね。

巻上

3月11日にWHOがパンデミックを宣言したわけなんですけど、僕は3月12日に出かけましたからね。無謀です。行っちゃいけないよね(笑)。信用してなかったんですよね、WHOを。今はちょっと信用してますけど。

高橋

続きまして、松岡大さん、現在はどんな状況ですか?

松岡

巻上さんのお話の続きで言うと、(2020年)3月10日に私はニューヨークに行きました。着いてすぐにパンデミック宣言があり、本当は3週間滞在するはずでしたが3日で帰ってきました。そこから2020年はいろんな公演だとかツアーの予定がほぼキャンセルになった。「これはまずいな」という感覚が来て、早々に、オンラインでいろいろ活動を始めようとしました。
それ以前も街を舞台にして、ダンスと音楽のセッションを街のいろんなところで、お客さんが移動して見られるという趣旨でやっていたので(LAND FES)、それを今度は映像で配信していこう、という流れになりました。
いろいろな助成金だとか支援を受けながら、どうにか去年は10本以上の映像をLAND FESプロデュースという形で、いろんなロケーションを舞台にして作ることができました。その中のひとつで、巻上さんが主催されている熱海未来音楽祭でもLAND FESを開催させていただいたりしました。ほかに東京の青梅、芝浦、深川でもやりました。
さっき巻上さんが、今までのつながりがあったから、今、いろんなことができるとおっしゃったんですけど、その通りで、何もないところからつながりを作ったり、物を立ち上げるのはすごく大変です。それまでの関係性をどうにか活かす形で、ダンスと音楽、演奏がいろんな風景の中で展開する映像を作ることができました。
逆にリアルな公演は、数としてはすごく少なくなりました。所属する山海塾としても、去年(2020年)の11月にはフランス領のレユニオン島に行って公演することができたのですが、今までは渡航することが仕事みたいなところがあったけど、そこが制限されてしまうと、やっぱりすごく難しい。
こういった状況になった時に、劇場での活動っていうのは見通しがなかなか悪い。そこである程度、切り替える気持ちがあったから、まだ、自分も表現活動続けていられるのかな、とは思いますね。

高橋

考え方を大きく変えて、ずっと前の形をなんとか残そうとして引っかかっているとなかなか変えられないというか、前に進めない。

松岡

もちろん自分が捨て切れているわけではないんですけれど、こういう状況になった当初は、周りの舞台芸術に関わる人たちも、「どうせ映像なら、そのダンスは見たくないよ」とか、「そんな表現できないよ」と考える人は、すごく多かったと思う。 今はもう少し、そういう声が多様化されてきたと思います。ちょっと変わってきたのかな。オンラインでの表現を、どう受け入れるかに。

高橋

お客さんがいて生で伝えてなんぼだーって叫んでいた人たちも、変えていかなきゃっていうのが当たり前になってきましたよね。

松岡

0か100かっていうことじゃないと思うんです。ただやっぱり、表現したい気持ちはどうしても残る。その方法論が一つだけになっちゃうと、どうしても止まってしまう。そこはいろんな手段を持っておいたほうがいいのかなと思います。

高橋

配信になったおかげで表現方法がの幅が広がったことはありますか?

松岡

実はこの(2021年)1月にニューヨークに行く予定だったんです。でもやっぱり全部キャンセルになってしまった。その代わりに、当初、一緒にやろうって言ってた人たちと、zoomで「どうする?」みたいなことを話したりします。
身体表現だと、音楽と違って、カメラや、撮影してくれる人が必要だったりします。その時に僕は、ちゃんと撮ってくれる自分の撮影クルーがいる。そういう提示ができるのは、良かったなと思いますね。

高橋

こういう時だからこそ、どういう強みを持っているのか、どういう繋がりを持っていたのか、また再認識できますね。
『あつまれどうぶつの森』みたいにパフォーマーの皆さんが一か所に集まってこう、パフォーマンスできたらいいですね。アバターで集まって。

松岡

バーチャルな空間で。

高橋

いつかできるかもしれませんよね、ポーンと。フリックでどっかにビョーンと移動して。

川上

前もねえ、VR作品を見せていただいた。

松岡

大野慶人さんという伝説の舞踏家の方がいて、去年、亡くなってしまったんですけども、その方のモーションデータをVRに遺したんです。それを2017年に寺田倉庫でやった、ダンスアーカイブプロジェクトという、ダンスをどうアーカイブしていくか、保存していくかというイベントで、一般の方がヘッドセットを付けて、追体験できるというようなこともやったんですよね。

高橋

そういうふうにすると自分の命がなくなっても、そのダンスパフォーマンスは遺る、みたいな感じがしますね。映像じゃなくてリアルに遺る。

松岡

そうですね。ダンスを残すって、どういうことなんだろうっていう問いが前提としてあります。映像を残したらダンスが残ったことになるのか。
舞踏をやっている人の中には、「舞踏は映像に残らない」という言い方をされる人も多いですが、それは主観的な意見だったりするので、「じゃあどうしたらのこるの?」というところで、最新のテクノロジーを使ってみたりしています。

高橋

おもしろいですね。

松岡

こういうことをしていておもしろいのは、メディアの再現性の高さとか、メディアのクオリティって、あんまり関係ないんですよね。
僕も学生の頃に、土方巽の一枚の白黒の写真を見てものすごい衝撃を受けました。こういうことやってみたいとか、こういうこと目指したいとか、思う人は思う。
それがVRになったからとか、3カメで4Kで撮影されたからと言って、それによってあんまり変わることじゃないっていうのが、おもしろい。

高橋

よもやの話に広がる。松岡さんの話だけで終わっていきそうなぐらいです。
では、絵描きのはとちゃんに。はとちゃん全日本だるま研究会の会員なんですね。

はと

はい。だるま研究会会員です。だるまを集めたり、工房に行ってお話を聞いたり、勝手な活動をしてます。中村浩訳(ひろのぶ)さんという方が会長で、埼玉の辺に本拠地があります。年に2回ぐらい「だるまニュース」という会報誌が届いて、年に1回、秋の全国大会で、1泊2日ぐらいの旅行があります。そういう不思議な組織があって。私はまだ、合宿には行ったことないんですけど(笑)。

高橋

いつかは参加して、レポートを待ってます。はとちゃんは現在、いかがお過ごしでしょうか。

はと

今年度は、アニメーションの学校に通っています。コマ撮り撮影の人形の夜間学校に行って、勉強して、1年間でだいたい3分から5分ぐらいのアニメーション1作品を作る、というのをやってます。コロナの影響で、4月スタートが6月スタートになりましたが、ずっと対面で授業をしていて今日も行ってきました。今は撮影に入っていて、たぶん3月ぐらいまで撮影して編集して、4月に上映会をやる、という流れです。

高橋

これはかなりステイホームな。

はと

はい。自転車で動ける範囲で。学校に自転車で行って、制作して、帰ってきます。

 

高橋

最も感染しなさそうな感じですね。

はと

でも、先生がなんと84歳で高齢なので、「先生にうつしてはならん」と、みんなで一番気を付けています。
先生が一番すごい呑んべえで、どうしても飲みたがるのを、どうくい止めるかっていうのが最近の課題です。行きたいけども、「先生、もうお店閉まってます!」っていう。「じゃあここで飲むか!」「いや、ちょっと先生、寒いから帰りましょう!」みたいな。

 

高橋

漫画みたい。素敵な先生ですね。

はと

すごく素敵な先生です。怖くて、優しくて、かわいらしい。

高橋

先生はコマ撮りのアニメーションを何十年もやってるような方ですか?

はと

そうです。ほんとレジェンドですね。コマ撮りのアニメーション業界では、たぶん知らない人はいないですね。名前を言うとほんとに「あっ、お世話になってます!」って、全員が頭を下げるみたいな、そんなすごい先生です。

高橋

だるま業界にコマ撮り業界。すごくマニアックな所に行ってますね。

川上

チェコ語もいまだに勉強している。

はと

2018年の秋から2019年まで1年間、チェコに英語の勉強をしに行ったんです。チェコに、英語の学校のビザで行けることになって、「英語をしゃべれるようになりたい!」と思って行ったんですけれども、レッスンを受けたら、すごくチェコ語にはまってしまった。
それから帰国して、日本でいろいろ仕事をしたのち、去年(2020年)の1月の終わりから、パンデミックが宣言される3月半ばまで、チェコにいたんです。
チェコの国境が閉鎖して、出られなくなるまでぼんやりしてたら、チェコに住んでいる日本人の友達に、「あなた帰れなくなるよ」と言われて、慌ててチケットを取り直して、日本に帰国しました。3月16日ですね。その時ユカシが、成田空港まで迎えに来てくれた。私はその時なぜか東京に部屋があったので、今ここにいます。中野区の木造4畳半で、お風呂なし、トイレ共同っていう、たぶん昭和4、50年ぐらいの物件に住んでいます。

高橋

今、そこから中継なんですね。

 

はと

そこから中継です。今は、出費が少ない生活なんです。
コマ撮りしつつ、なんだかすごく忙しくて。睡眠時間5時間ぐらいで働いています。
先月は、大二郎さんからサントムーン柿田川の、お正月用のフォトスポットとして丑を描くお仕事をいただきました。大二郎さん家に行って、大二郎さんがいない中、一人でずっとでっかい牛とか門松とか、絵をたくさん描いてました。
コロナで困っていることは、海外に行けないっていうことぐらいですね。 

高橋

そこはもう皆さん、どうしようもない共通部分ですね。

はと

そうなんです。
話は戻りますが、コロナのおかげで、チェコ語のオンライン授業が続けて受けられることになりました。チェコで行っていた語学学校が全部オンラインになったので、私はこっちでも続けて授業が受けられることになって、現地とつながれております。

高橋

まさに今日のテーマ「どこへでも行ける」という感じですね。オンラインがあれば。

はと

そうですね。語学学習には良い状況です。

高橋

なるほど。今、悪くはない状況ということですよね?むしろ良い状況になっていますか?

はと

そうですね、けがの功名みたいになってる。

(2)どこへでも行ける どこででも生きる

川上

みんなそうですけど、変わらざるを得ないところに来ているから、変わると思っている。
巻上さんもそうですし、オンラインをどううまく使っていくかとか、オンラインができたからこそ、その中でできてる表現をどう変えていくか、とか、そういうところに僕らはこう、面白味を持っている。どうしてもある表現にずっと固執してるというか、飽きていっちゃうんですよ。それをどう変えていくかというのは、ワクワクもしています。
松岡さんとはとちゃんは、《ENGI-MON(えんぎもん)》という、チェコに持っていったうちの作品があるんですが、前段階で人に見せてやってみないとね、っていうことでサントムーン柿田川で、新作盆踊りをやらせてもらったっていう経緯があるんです。

 

高橋

どうだったんですか?チェコの方の反応は?

松岡

すごい盛り上がりましたよ、本当に。
みんなが簡単に踊れる、盆踊りの振り付けをしました。チンドンバンドの「ジュンマキ堂」さんと一緒に、ほんとに参加型のパフォーマンスになった。
日頃のストレスを晴らすかのように、もうすごいパーティー騒ぎになっちゃった。

川上

はとちゃんはだるまの中に入っていたんだよね。

はと

はい。私はだるまになってました、その時。

川上

外側はユカシが描いていて、入っていたのがはと。そんな状態になっていたんです。

高橋

お二人のコラボレーションがチェコで実現してるっていうのも、それも「どこへでも行ける」感じですね。アート、エンターテイメントさえあれば、どこでも行けるって、すごいですね、みなさん。

川上

巻上さんも熱海未来音楽祭ではパレードをいつもやってらっしゃるので、熱海の街中をうちとは違うチンドンバンドさんと一緒に練り歩いていた。去年(2020年)、一番最近の熱海未来音楽祭では、ワークショップで作った、神様のような、藁とか、なんですかね。

巻上

いちおうあれは、フェイスシールド。コロナの中で自分のマスクを作ろうというのをテーマにしていた。

川上

みなさん凝ってらっしゃって、舞台美術家の方をお呼びして、レクチャーをされてたのもあって、すごく個性的なものがいっぱいできていた。

高橋

こがし祭りとか有名なお祭りがあるから、祭り好きなんですよね、熱海の方はね。熱海は、僕もラジオで2年間ほどお世話になりましたけど、道がほぼ、上りか下りなんですよね。けっこう練り歩くのが大変。

高橋

神ですね。稲穂がついて。

巻上

自分で作るわけ。

はと

梱包用の、あの茶色い紙ですよね。お皿包むやつですよね。

高橋

ビヨーンと伸びるやつですよね。

サノ

やばいこれ!絵に描けない。

 (一同爆笑)

高橋

これ、絵にしてもらいたいですね。

サノ

ムズッ!アハハ!何がついてるのかも、わかんないですもん。おもしろーい。

はと

シャルル・フレジェみたい。

川上

そう、シャルル・フレジェみたい。

サノ

結局、なんでもいいんですよね。つけたい物をつけてみるとか、創作することができるのが楽しいんですよね?このフェイスシールドに。

はと

私も、お店の依頼で花笠フェイスシールドを作りましたね。こういう花笠に絵を描いて、でここにアクリルの薄いペラペラの板をつける。

川上

みんなそういう方向に。みんな、ただの何かではすまなくなっていく。

はと

楽しくしていこうっていう方向に行く。

高橋

うわ、こういうことをチェコで。素敵ですね。

川上

どんどん盛り上がっていくというかね。今では考えられない状況ですね。

松岡

けっこう人がいて、密でしたね。

高橋

こういう写真を見ると、お客さんがいるほうがテンションはめちゃくちゃ上がりますよね。無観客か有観客か別にして配信という表現の方法もありますけど、反応を見ながらっていうのはいいですね。アドレナリンが出るんでしょうね。

サノ

今になると、夢のような景色ですよね。

高橋

これ一体どこでやったんだって言われちゃいますよね。
こんな、みんなでワイワイ笑いながらしゃべるなんて配信だからできてますよね。これみんな集まってやってたら大変なことになっちゃいますもんね。いいですね、ネットで話すと、大笑いしてもつば飛ばそうがマスクなしで話せてますもんね、みなさん。
ほんとは今、この流れでちょっと前に戻ってほんとにコロナ始まった頃の大ピンチの話とかもしたいところではあるんですけど、なんか乗り越えた感がありますね。みなさんね。もうダメだ!とかそういうこと、なかったですか。巻上さんはなさそうですけども。

巻上

2、3ヶ月、家にいて、それでライブを始めたら、脚力が衰えた。2時間ぐらいやる体力がなくなってきちゃう。

高橋

芸能人とかでもよく、コロナのせいで家でトレーニングして、体がバキバキになったという話も。

巻上

近所の太極拳の教室行ってるんですけど、みんな70代なんです。一番年上の人が90歳ぐらい。コロナが始まった頃から(教室が)休みになっちゃってね。高齢の人なので、怖くて、今もずっと休みなんです。太極拳が一番いいんですけどね。

高橋

ゆっくり動くのがまたいいですよね。

巻上

ほんとに遅いんですよ。楊式太極拳ていうのがあって、めっちゃくちゃ遅いんですよ。舞踏より遅いかも。寝ちゃったりするんです。

高橋

いいですね。こないだいただいたプロフィールの写真がジャッキー・チェンかなと思ったら、あれ、太極拳のポーズだったんですね。

巻上

あれは崆峒派(こうどうは)っていう、僕が30年ぐらいやってるまた別の武術なんです。武術はずっとやってます。太極拳は、ここ5年ぐらい。

高橋

やってらっしゃいますね。ピンチから、いい話に持っていっちゃいますね。

巻上

ほんと筋肉落ちてましたねー。
歌もそうですけど、なんでも、ちょっと人前でやらないと、人前でやる時に特別に動く筋肉があるはずなんですよ。それがね、少し衰えるんですよ。いくら歌ったり鍛えたりしてても、そこのところの筋肉が衰える。

高橋

使うの、日常と違う筋肉ですもんね。

巻上

たぶんアスリートの人もそうだと思うけど、本番じゃないとダメなんですよ。リハーサルとか、鍛えるだけでは、本当の力はつかない。だからやっぱり、本番をこなさないと。で、本番がしばらくなかったから、「わ!衰えた!」と思いましたね。あんまり人にはわからないんだけれど、自分ですごくよくわかる。

高橋

そこがピンチだったんですね。

巻上

うん。松岡さんもわかるでしょ? それ。

松岡

そうですね。そればっかりは本当に。

高橋

体力落ちた感はありましたか? 松岡さん。

松岡

体力というより、本番をやる感覚っていうんですかね。そのへんはもどかしさをずっと抱えています。

高橋

格闘家の話も聞きましたけど試合勘がわかんなくなっちゃう。自分のテンポとかパターンがわかんなくなるっていうのは、言いますもんね。

巻上

あと無観客ライブをやってるんですよ、僕らもね。今月もこれから、無観客で二つやります。昨年(2020)の5月ぐらいは無観客でやってましたね。無観客だと反応がない。コメントが文字で出てきても、ライブをやってる最中に見れないので、後で見るしかない。

高橋

僕も1回無観客でMCやりましたけど、どこを見ていいかわからない。会場にカメラがあると言っても、ランプも点いてないんで、真っ暗闇のどこかをこう見ながら、探りながらしゃべっている感じはありましたね。「ありがとうございましたー!」って言っても拍手も起きませんしね。

巻上

言ってみれば、ある程度でかい会場でやっている感じに近いのかもしれない。大きな会場で自分にスポットライトが当たってないと、みんな真っ暗に見える。お客さんがいないのと同じような感じ。
小さなライブハウスだったらわかるんだけど、そうじゃないとこだと、そういう感じになるので、そのつもりでやるっていう感じだったのかなー。

高橋

はとちゃんは、もうまずい!みたいな大ピンチ感はありましたか?

はと

(2020年)3月、チェコにいる時、チェコ語も英語もそんなにできないので現地のニュースを見つつ、なんかやばいなーみたいな空気を感じました。

高橋

雰囲気ですね。

はと

帰りたくないなー、みたいな。結局1週間ぐらい帰国を早めて、安いチケットが買えたんですけど、あるミスをして、荷物の超過料金にをけっこうなお金を払ってしまいました。ちょっとまだ、傷が癒えてないです。すごい大ピンチになると計算ができなくなるんですね。なんかわからずに払って、よくよく見たら、びっくりする金額だった。「あー!やっちまったぁ!でももうしょうがない」と飛行機に乗って、その16時間ぐらいのフライトの間、「ああ、このしくじった分をアルバイトをして稼ごう、取り戻そう」と思ったんです。
それで、帰国早々アルバイトを探したんです。で、目の前のクリーニング屋で募集していたので行ったら、ライブとかに行く人はダメですって言われて、断られました。で、初めてタウンワークみたいなの見たら、オリンピックの選手村の掃除の募集をしていたんです。日給が16,000円ぐらいもらえる。ちょうどまだ募集期間中だったので、これはおもしろそうだと思って、すぐに申し込みました。そしたら面接の日に、オリンピック延期のお知らせが出てしまって、結局ピンチのまま、今に至ります。でもその後、いろんな方面からお仕事をもらいました。結局その3月に探したバイトは全部ダメでした。

巻上

でもその時って超過料金サービスにならないのかねえ。

はと

ならなかったですね。預けて払って、1回検査場並んでハッと気づいて、「あれ?これはとんでもないユーロ払ってる!」と思って、戻ったんです。でも、もうダメで。航空会社も今ピンチでしょうから、私のその数万円が、カタルーニャ航空だったかな、少しでも…。

サノ

寄付したってこと?気分的に。

はと

お金を回そうと。

サノ

全然顔が納得してないけど。

高橋

コロナ禍の、誰も想像しえないピンチですね。

巻上

うちのメンバーは、エストニアから帰る時にポーランド航空予約してたんですけど、飛行機が急に飛ばなくなった。お金を払い戻しに行こうっていって、窓口に行ったら、ポーランド航空の人全員帰っていて誰もいなくて、払い戻すことができなかった。慌てて、違う会社を探して、トルコ航空で帰ってきた。

松岡

危ないですね。

はと

ピンチといえば、コロナだったかもしれないピンチとかね。

高橋

僕の周りも、あれってもしかしてコロナだったんじゃないの、みたいなのは一昨年の末ぐらいから、そうだったんじゃないの、って言う人はいますね。

巻上

今まで引いたことのない風邪引きましたもん。福岡から帰ってきた後だったんだけど、福岡に、武漢からのフェリーが着いてたんですよ。フェリーの人たちが泊ってる。あれはびっくりした。

高橋

これ今、すごいお話ですね。びっくりしました。
みなさんそれぞれ、一瞬疑惑とか、たぶんね、きっとあるんでしょうね。
僕一瞬、熱ガッと上がって、一瞬で下がったことあったんですよ。37点いくつから上がってこれは…!と思って。わかんないですね。この話はあんまり広げないほうがいい。

川上

でも、俺もあります。濃厚接触者みたいな状況になりましたよ、って報告受けた時に、とたんに味がわからなくなった。精神的なものだったんですよ。だから、気持ちの上で、俺そうかもって思った段階で、全然味がわかんなくなって、「これそうか!」って思ったけど、全然違いました。気持ちでそういうことも起こるんだなーと思いましたね。

高橋

疑惑も乗り越えて。でもみなさん、いろんな人に会わなきゃいけない仕事ですから、思い起こせば…みたいな感じになっちゃうこともありますよね。怖いですよね。

川上

まあ気を付けても、気を付けきれないけど、じゃあそこで感染しないようにするための対策はすごくやるようになりましたね。
 誰かが持ってきちゃうもの自体はもう、交通事故に近い。だってその人も気を付けてたって、たまたまコンビニで拾っちゃうこともあるかもしれないし、キリがない。でなくて、じゃあ会った時に、消毒してますか、対面で、マスクしないでしゃべってないですか、とか、そういうところを気を付けるしかない。

高橋

まさかこんなに気を付けてイベントを開催する事になるとは思わなかったですね。マスクしないと、今そわそわしちゃいますもんね。

(3)未来の妄想

高橋

では、今後の話にもいきましょうか。僕も、今ラジオをやってて、ゲストの方に今後の予定を一応聞くんですけど、「一応ありますけどどうなるかね」っていうのがだいたいお決まりのパターンになってきています。
かといって昔みたいに、決めて、もうやるんだ、無理やりゴリ押しするというよりは、一応決めるけども、どんなことになってもOKな精神状態で進めていくみたいですね。あんまり多くの人が関わる場合には、早めに中止するっていうものもありますけど、決めないで行くよりは決めて、どういうふうに進んでいくのかっていうのを、随時考えている、そんな方も多いという感覚があります。
巻上さん、2021年になりまして、また1年始まりましたけど、今後の予定は?そのまま聞いちゃいますけども。

巻上

僕は一昨年からマンスリーヒカシューと言って毎月ライブをやっている。昨年も一部無観客はありましたけれど、なんとか全部やり遂げたんです。で、今年も3年目かな、12月までスケジュール決まっています。1年間やると。
昨年は1年間で毎月新曲を書く、とやってきて、それがだいたいアルバム分たまってますので、スタジオの処理が上がってできあがったら、レコーディングして、春か夏には出したい。そういう計画です。

高橋

すごいですね。全然前のめりですね。

巻上

友達のカール・ストーンは、毎日のようにレコーディングしてるんですよ、ニューヨークで。負けてられないでしょ。しかも毎月CD出してるんですよ。信じられないです。

高橋

すごいですね。もう意地ですね。コロナをぶっ飛ばせって地でやっていますね。これはほんと負けてらんないって思いますね。

 

巻上

やり続けるしかないです。
 あと、口琴を演奏している動画を今までに十何本上げたんだけど、今年もまた始めようかなと思っています。100本ぐらい作りたい。口琴しかやってないですよ。ビョンビョンビョン…っていうのを100本作れば。誰が見てくれるんだって気はするんですけど。

高橋

巻上さんぜひ、僕のラジオ番組出てください。ここでお願いしちゃいますけど。もう、アルバムリリースしたらぜひ聴きたいです。

巻上

僕エストニアのライブがなくなったので、レコーディングをしてきたんですよ。それで最近出したの。もう時間がもったいないから、じゃあレコーディングしよう、って録音スタジオ借りて、レコーディングして、帰ってきました。
でも、おもしろいことが起きて、録音した時にも、普段だったら人がすごくたくさんいるのに、ちょうど誰もいなくなってて、いい写真が撮れました。
あと口琴の演奏で浄連の滝に行って、演奏して、普段だったら中国人含めて観光客がいっぱいいて、とてもじゃないけど、そんなところで演奏できないんだけど、誰もいなかったので浄蓮の滝で演奏しました。

高橋

滝をバックに、いいですね。いい話しか出てこないですね、ほんと巻上さんのお話聞くと。どんどん前のめりな。いやー、びっくりというか、もう感心しちゃいましたね。
 松岡さん、どうですか?

松岡

LAND  FESでも去年はいろんなロケーショを舞台にパフォーマンスを映像を配信するという形にしてきました。映像配信を続けつつも、今ちょっと僕が個人的に考えてるのは、逆にリアルな場で、本当に少人数でいいので、パフォーマンスを取り戻していきたいなと思っています。
と言いますのも、リアルな場で何かをする、共有するって、今はみんなが、しようと思ってもできない。だけど、本当に少人数制で、かつ感染対策もきちんとして、たとえばダンスと音楽だけではなく、他のジャンルと結び付ける。今考えてるのは発酵とか食。食べるということよりは、もう少し変に、こだわりがあるようなパフォーマンスに結び付けて、そういう場を作りたいなー、なんて準備のようなものをしています。
これオリンピックがどうなるかわかんないですけれども、Tokyo Tokyo FESTIVALっていうのが、一応オリンピックと合わせて開催される予定でして、そこのプログラムの一つにTOKYO REAL UNDERGROUNDというのがあるんです。それは私が関わっているプログラムの一つで、舞踏を、現代に改めて紹介するというか、東京の地下空間と合わせて、いろいろなライブや配信プログラムを、実施していくっていう内容です。もちろんそれも昨年にやる予定だったんですけど、延期して、今年どうなるかっていう状況ではあるんですが、そういう準備も進めています。

高橋

東京リアルアンダーグラウンド、タイトルがいいですねえ。

松岡

Tもともと、パフォーミングアーツの世界で、舞踏に影響を受けている人が海外にけっこういて、そういう方を東京に集めることを考えていたんですけども、今は、海外招聘プログラムがひじょうに難しい。その代わり、日本国内で活動する人たちに声かけて、ちょっと新しくやりたい。

高橋

国内の方にとってはチャンスですよね。また新しい、もっとこう和テイストが高くなる。

松岡

和テイスト(笑)。まあそうですね。舞踏というジャンルは、巻上さんのほうが詳しいんですけど、実は、日本で知ってる方ってあんまり多くはなくて、意外と海外で広く知られている状況です。1960年代に日本で生まれたオリジナルな身体表現ということで、ほんとに西洋のダンスとはまったく違う文脈から生まれています。
今もすごく貴重な無形文化として、評価されるべきだと思っているので、それを日本人がどう再評価するかとか、どういうふうにとらえてもらえるのか、そういうところを打ち出していきたいな、と思っています。

 

高橋

日本人による再評価って大事ですね。

松岡

再評価というか、まったく知らない人も多いと思うんですよね。それをこう、今という現代の文脈の中で見てもらえたらなと思っています。

高橋

それも、コロナ禍によって見えてきた、シフトしてきた新しい路線ですもんね。

松岡

ダンスアーカイブ構想という団体が、このプログラムの舵を取っているんですけれど、最初に申し上げたとおり、「無形文化である舞踏という表現を、どうやって形にしてのこしていくか」をテーマにしているので、それがオリンピックと合わせて大規模なイベントにできることは、とても有意義な機会だと思います。
東京都がやらないという決断をしても、こちらとしてやっていきたい。一応チーム内ではそういう見解です。これは上の人たちも見えていないと思うので、そのへんはやっぱりもどかしいですね。
どうしても映像配信ということは起きてくると思うんですけども、昨年もLAND FESのでやってきたことがあるので、そういう意味でもフレキシブルに対応できるといいなと。

高橋

そうですね。本当にどう来てもいいように。
じゃあ、はとちゃん今後の予定は?

はと

今月末に、2日間、展示イベントのはとだるま市を開催して、3月の後半に福島に行くことが決まりました。

高橋

3月に、福島に。意味がありますね。

はと

そうですね。あとは、学校行って、作品を仕上げて、世界の情勢が良ければ、チェコに遊びに行くのが今年の予定ですね。オリンピックが開催されたら、たぶん選手村の掃除に行きます。

高橋

そしたらチェコは行かない?

はと

チェコはどこかのタイミングで、観光に行きたいですね。

高橋

いいですね。ちょっとゆるい感じが。
スケラボはどうでしょうか、代表。

川上

はい。僕はっていうかうちの団体はあと1回、2月にながめくらしつさんと、『…の手触り』という公演の第3弾をやる予定でしたが、どうなるかなあ、というところです。やっぱりいろんなところからメンバーを集めてやっているパフォーマンスなので、難しいかもしれないですね。

高橋

緊急事態宣言というちょっと厄介なものがねえ。

川上

ただ、やるやらないは別として作ることをし続けていきます。あと、それは置いといて、じゃあ県内って何だろう、って考えるきっかけにもなっています。
県どうし、県の中のプライドじゃないけど、各々の都道府県が自分たちの県のことをもう一回見返したり、発見していくっていういい機会に転じていくのかな、と思っています。僕もわりと仕事で、この人を静岡で見せたいっていう人を呼んでやっていた面も多いし、静岡県の人をコラボしてもらって見せるということをしていたので、すべて静岡県の人たちをピックアップしてくってのは、逆に面白い。
要は静岡をもう一回見直すきっかけになるんです。どの都道府県でもそういうことが起こっていけば、それでおもしろいかも。静岡県のアイデンティティを生む動きができたらおもしろいなあと思っています。

高橋

たしかにこう、今回の一件で地元っていうのをうんと見るようになりましたよね。

 

川上

目がね、そっちへいかざるを得ない。そうなったらそうなったなりの工夫ができるのが、まあうちの強みだったり、アーティストというものの強みだという気もしています。いい感じでルールに従うことと、いい感じでルールの間を抜けていくことと、両方考えつつ。

高橋

抗うわけではなく、抜けていくわけですね。

川上

マイナスないさかいや争いよりもピースフルな、平和なほうがいいと思うんですけど、まったくなきゃいいってもんでもない。清濁を併せ持ったところに生きていくとか、文化とかってあると思うので、そこはなくさないようにしていきたいですね。
やっぱヒールがいないと立たないじゃないですか。プロレスとか。

高橋

プロレス的にヒールがいないとベビーも存在しないですからね。

 

川上

だからベビー同士が戦っててもあれだから、結局はそういうことなんですよ。
 で、余談というか、松岡君の「発酵」がすごい気になった。

松岡

思い付きです(笑)。

はと

麹とか味噌とかですか?

松岡

もともと、劇場とか、既存のイベントスペースではなくて、もっといろんな人が触れやすいようにしたかったんですよ。ダンスとか、即興音楽とか、そういうことに。
街の中でライブをするってやっぱり、同じコミュニティというか、閉じた関係性の中で見せたり、やったりということが多くなってきてしまう。そういう違うコミュニティと楽しく交われるような感じっていうのが、リアルな場でできるといいな、と思っています。
もちろん、それはコロナ以前から起きていることではあるんですけど、インターネットの世界って、どうしても自分が見たい、聞きたいものが自分の周りにいつの間にかあるじゃないですか。
ちょっと話は逸れるんですけど、ほんとに最近中国の情報が全然入ってこない。もちろん中国は情報統制していたりしますけど、あの国14億人いるじゃないですか。その人たちが今、何を考えているのかとか、どういう表現をしたいのかとか、そういう情報が以前より薄い気がする。逆にアメリカがすごい輝きを失いつつあったりだとか。そういうところにも漠然とした不安を感じます。
つい、パソコンを開くとTwitterやFacebookなどで情報収集しちゃうんですけど、そうじゃない部分ですごくいろんなことが起きているんだろうなってことを、忘れないようにしないといけないなって思います。
リアルでやれることが、すごく価値が上がってきていると思うんです。そこをこう、ダンスや音楽とうまくくっつけて、再接続って言うんですか、コロナ以前もそういういろんな立場の人のコラボってあったと思うんですけど、そこも前向きに、あきらめずにいきたいですね。

高橋

今こそいろんなジャンルで新しいものをコラボして生み出していく時なのかな。

松岡

そうですね。難しく感じちゃうと難しいと思うんですけど、でも逆に、飲食の方も、本業がままならないと、もしかして逆の発想というか、一緒になんかやってみてもいいよって思う人もいるかもしれない。

高橋

あるかもしれませんね。今まで接触のなかった人たちと、新しいものが生まれる可能性は十分あり得ますもんね。

松岡

やっぱりそこをあきらめていきたくないですね。コロナだからといって。

高橋

そうですねえ。さっきも地域に対してもリアルだっていうのが、さっきも大二郎さんが静岡県に対してよ地元愛というか、思う気持ちとか、なんかインターネットでどこでも行けるし、なんでも見れるし、ゲームでどんなスポーツもできるし、海外旅行もどんどん行けたのが行けなくなる。本当の足元のリアルをみんなが目指しているような感じはしますね。

松岡

そうですね。やっぱり大きいところってすごく大変だと思うんですよ。方向転換ができなくて。私みたいな、インディペンデントで動いてる人間は、逆にそういうところを活かして、どんどんコネクトしていきたいなあ、とは思いますね。

高橋

みなさん小回りが効きますね。

川上

今日のメンツは小回りが効く。小回りというか、フットワークが軽い。

高橋

すぐ接続する感じですね、どこかと。

松岡

よく間違えちゃったりとかして(笑)。それも含めて。

川上

最近は、非常食とコネクトしたい。

松岡

ああ、いいですね。僕も、防災とパフォーミングアーツっていうのはすごい考えました。

高橋

非常食。ちょっと一緒にそれっぽいのは、長浜城あたりでやりましたね。

川上

街の非常食っていうのもあるし、あと、古い非常食は食べていかなきゃいけないので、どの非常食がうまいかみたいな、ちょっと怒られそうなやつだけど。うちの企画だったらいくらでもできる。踊るとかじゃないんだけど。
今、視覚障害者の方や聴覚障害者の方のことを考えた活動をしていて、そういう意味でも何ができるのか、とか。考える時間はけっこうあるので、まさに妄想を話し合うこういう機会があってもいいんじゃないかな。

高橋

今年はより妄想が加速しそうですね。

川上

加速したものをどう表現するのか、誰とやらせてもらえるのかわからないけど。イラストならはとちゃんにまたお願いしたいのもあるし。ライブとか。
巻上さんにもね、以前ファッションショーの音楽やっていただいたりした。だからさっき発酵と聞いて、こう豆が発酵してプツプツする音をサンプリングして何かできないかな、とか妄想しちゃった。菌類の研究している大学とコラボするとか、それはおもしろいかもしれない。

巻上

僕らは粘菌類をヒカシューのジャケットで、変形菌かな、ジャケットにしたりしてます。変形菌の音楽。変形菌っていうのは、動物になったり植物になったりする。何者かわからないんですよ。いろんなふうに変化してくの。家の裏にもいたんですけど、公園の整備でいなくなりましたね。

サノ

巻上さん、そういうのって、なんで知るんですか?知識として。すごく興味ある。最近だともう、検索したらピョンて出てきちゃうじゃないですか、だけど、そういうことではないですよね。気になるワードとか、いっぱいいっぱい本を読んだりとか、っていうのは。どういうきっかけで菌を掘り下げていくんですか。

巻上

それは、うちのメンバーがね、けっこうよく知っていて、それを研究してる博士、南方熊楠系の人がいて、その人に習ったりしてたので、だから前から知ってるんですよね。南方熊楠の漫画もおもしろくて、粘菌をマッチ箱の中に入れて、昭和天皇に献上したとかね。

高橋

すげえ、粘菌描いてる。

サノ

あくまで、これは、私の想像で描いただけです。私、絵描いている身としての想いを言うと、巻上さんになんでその質問をしたかって言ったら、すぐ映像とか写真を見るのが悔しい気持ちになるんですよ。その想像力がそこでストップしちゃうとか、なんか止められるのが、簡単にわかっちゃう悔しさみたいなのはわかってもらえます?
小学生に絵の話をする機会とかたまににいただくんですけど、そういうの簡単にやって、おさまってんじゃねーぞみたいな話するんですよ。知った気になってんじゃねーぞっていう。これが合ってようが間違ってようが今はよくて。

巻上

合ってたんだけどダメにしちゃった。

サノ

ここでなんか、これはめちゃめちゃ適当でいいんで、私なんか描きたかったんですよ、粘菌。

高橋

粘菌人間がみんなで手つないでいるみたい。

サノ

あ、いいですね、それ。

巻上

ものすごいちっちゃい。目を凝らさないと、山に行ってもなかなか見つけられない。公園とか歩いてると、見つけようと必死だからね。

(一同爆笑)

高橋

カビじゃないですもんね、粘菌、ねえ。

巻上

カビも今、カビキラーが強すぎて、カビの危機と言われているんでしょ。ものが腐らないとか。防腐剤的なものを人間が食してるので、モンゴルとかあっちのほうで、鳥に食べさせて葬儀をするわけ、鳥葬って言うんだけどね。うまく腐らないので、(鳥が)食べてくれない。大問題なんですよ。だから、僕らは防腐剤でできてるの。

高橋

人間がまずくなっちゃったんですね。

巻上

土に還りませんよ、きっと。

高橋

粘菌も出ないかもしれないですね、僕らの身体。

巻上

そういう時代になりました。

高橋

今日は粘菌で、まとまりそうな感じですね。

サノ

なんで粘菌の話なんだっけ?

巻上

静岡県の話だと、静岡県は演劇のまち、ってのを立ち上げたんでしょ?今年から。静岡新聞に載ってましたよ。

川上

こっちへ舵が切られていくんでしょうね。
僕らはたぶん、どこがどうなろうが、やることをやるだけですね。巻上さんも好きなことをやっちゃってほしい。それでいいと思います。
毎回、変なゲストを呼んでるわけですけど、改めて聞いてもやっぱり変な人たちだなと思って、うれしくなっちゃう。

高橋

うれしく、楽しくなっちゃいましたね。
何ができるんだろう、とか。なんか出会った人それぞれと、あ、この人とは何できんのかな?この人は何できんのかな?ってやりたいですもんね、やれなくなくなっちゃってるんで。出会った人すべてとなんかやりたいなっていう、常に妄想が続いてる感じがしますね、今ね。

川上

実は妄想会議オンラインって、今年度に関してはこれが最終回なんです。だけどまた来年なり、どういう形かでできていくといいです。

巻上

妄想は危険ですよね。僕、『至高の妄想』っていう詩集出したじゃないですか。Amazonで検索すると、18禁になっちゃうんですよ。あなたは18歳以上ですか?って。たぶん「妄想」って言葉が悪いんだと思うけど。
今ほんとにおかしい。youtubeでも、AIがいろいろ決めて、これはあなた著作権に引っかかりますよって出てくるんだね。参りますよ、ほんとに。AIが馬鹿すぎて。
ほんとに頭悪いですよ。だって、ドラムのインプロビゼーション、ドンドンタッチャ、ドンドンタッチャ、ってやってたら、それ、どっかアフリカかなんかのバンドの著作権に引っかかりますとか言ってきて。誰でもやってるやつだから。

高橋

脱線もいい感じで、妄想なくして創造なしですね。別に名言でもなんでもないですけど。皆さんの話を聞いてるとやっぱり、そうだなー、なんて。

サノ

妄想っていいですよね。

高橋

いいですよねー。自由ですしね。止められないですしね。

サノ

もう忘れてましたけど、このフェイスシールドとかね。
これ、作ってみようかと思って、自分で。フェイスシールドをすごいたくさんいただいたんですよ。だからどうしようかなーって思ってたんで、すごくいいヒントをいただいたんで、個人的にまねさせていただきます。

高橋

僕もいじくろう、いろんな物で。そうするとなんか楽しいですもんね。こんなの付けて、って思うんですけど、変身したような感じがして。戦隊ヒーローみたいな感じで付けてれば。

はと

オンラインというか映像で男の人も乳首出しちゃダメになったんですよね。
外国でライブがあった時に、ベースの人が半裸だったら、もうすごい止められていた。ライブハウスのスタッフに、何かはおってください、って言われて、結局お客さんが着ていたジャンバーを着てやったんですけど。ダメみたいです。

サノ

じゃあ松岡さんなんてどうなっちゃうの?ほぼモザイクじゃん!

はと

隠さないとダメみたいですね。

川上

白塗り塗ってるんで、っていうことで。

サノ

あれは何?着るものとして認められるわけ?

松岡

コスチュームですよね。

高橋

薄いコスチュームですよね。

松岡

じゃあ、もう少し分厚くします。

高橋

厚塗りで。
でも僕がやってるあの、沼津プロレス、プロレスラーが筋肉ポーズで腕グッってやったら、わいせつな画像が含まれていますって判定された。腕の筋肉が、太ももだと思ったらしくて!ええー?!って。

巻上

肌色が多過ぎるんだ。

高橋

それはびっくりしましたね。表現も微妙ですね。リアルな乳首も、ね。リアルでもダメですかね。

サノ

乳首ってそんな重要なんすかね?そんな、あんな、つぶっとした見えてても見えなくても大事なんですかね。

松岡

乳首大事でしょ。

巻上

欲情した人がいたんじゃないかね。だからもう、男もダメ、みたいになったの。

サノ

昔はほら『バカ殿』とか見てると半裸のお姉ちゃんとかいっぱい出てきてたじゃないですか。ああいう時代じゃないんですよね。本当にあの頃のテレビとか映像って、すっごいおもしろかったな。

高橋

再放送絶対不可ですよね。

サノ

映像とかみんな撮るようになったら、どんどんまた新しい規制が出てくるんでしょうね。

川上

この第3回、各ゲスト、ひじょうに個性的で、私は全部参加させていただいたけど、よかったです。

高橋

ありがとうございます。せっかくなので、ゲストの皆さんからも一言ずつ感想を。
巻上さん、今日いかがでしたか。

巻上

楽しみました。わかんないけど。その反応の中で生きているだけですから。

松岡

楽しかったです。もっと話したいですけどね。この流れの中だとこういう話がでてきた。

はと

楽しかったです。巻上さんも松岡さんも、初めて見た時はステージなので。巻上さんを初めて見たのは、たぶん15年ぐらい前の、いわきだか、あの辺で、見ました。あと、たぶん松岡さんも山海塾で初めて見ました。まさかこんな方だとは思わず。あの憧れの白い人が、こんな普通に肌色だったなんて、っていう。楽しかったです。

高橋

グラフィックレコーディングのユカシさん、今日は描き貯められましたか?描き高、高かったですか?

サノ

枚数としてはいつもより少ないんですよ。だけど、みちっとしてる。あとすごく、よくいろんな話を飛んでる感じがしますよね、多岐に渡って。だから絵の表現が難しい。手が止まる。でもわりといい意味で妄想がすごかった。絵ではおさまらない、もっと聞きたくなるような妄想がいろいろ飛び出てたんじゃないかなと思いました。すごい楽しかったです。ありがとうございました。

高橋

僕もすごく楽しかったですね。たっぷりと2時間ほど、みなさんありがとうございました。
妄想会議オンライン第3回、「どこへでも行ける どこででも生きる」。今日はゲストに、巻上公一さん、そして松岡大さん、それからはとちゃん。グラフィックレコーディングはサノユカシさん、そしてプロデューサーに川上大二郎さん、そして私高橋裕一郎でお送りいたしました。
ではまた次回、凄まじい話をしたいと思いますので、楽しい話をよろしくお願いいたします。ありがとうございました!

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